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家畜技術情報

マイコプラズマ性乳房炎

はじめに

マイコプラズマ性乳房炎は古くからある病気ですが、国内では2006年以降農場の規模拡大によって導入牛が増加した大規模牛群での発生が顕著に増加しました。また、哺乳子牛の集約的管理(哺乳ロボットなどの集団哺乳、哺乳期からの預託)によりマイコプラズマ肺炎が感染拡大していることも大きく関連しています。特に病原性の強いM.bovis、それに次ぐM.bovigenitalium、M.canadenseなどが農場では問題になりやすいとされています。マイコプラズマ性乳房炎は通常の乳房炎とは異なる点があり、迅速な診断および対応が遅れるとその被害は甚大なものになってしまうことから、今一度その特性と対処法、予防などについてまとめます。

 

特徴

・ 乳房のしこりが強い(複数の結節ができることも)

・泌乳停止や泌乳量の激減

・短期間で複数分房に罹患

・一般細菌検査では陰性

・通常の軟膏治療では治癒しない

・乳房炎だけの場合、発熱はあっても食欲不振など一般状態は悪くないことが多い

・肺炎や関節炎に継発、もしくは併発することも

・同症状の乳房炎が短期間で急に増加

 

感染経路

・上行性感染(外部からの感染)

主に搾乳器具、搾乳者の手指または環境中(割合は少ない)の菌が乳頭口から侵入、乳腺に移行

70-100個の菌で感染成立(感染牛の乳汁には1000~1億/1cc)

⇒ 伝染力が著しく強い

・下行性感染(体内を移動)

体内(肺、生殖器、関節)にあるマイコプラズマが血液を介して乳腺に移行

※通常の乳房炎原因菌では認められない経路とされる

 

発生時どう対応するか

感染牛の摘発、菌種の同定

乳房炎牛から検出された場合は、発症しているため、菌種の同定と同時に他の乳房炎牛および分娩牛(バルクに入れていない牛)の乳汁検査実施し、他に感染牛がいないか確認するとともに、必要に応じてバルク乳の検査も実施する。バルク乳からも検出された場合は全頭検査により個体の特定を急ぎ、その間感染牛と同居など感染の可能性がある牛は移動せず隔離する。スクリーニングのバルク乳検査から検出された場合はまず菌種の同定をし、病原性の強い菌種(前述3種)であれば個体特定をするために全頭検査を実施。大規模牛群であれば牛群ごとにバルク乳を検査すると群が特定しやすい。それ以外の菌種であればバルク乳のモニタリングを継続する。

・検査結果が出るまでは基本的に牛の移動はせず、隔離や搾乳順番の変更を実施⇒フリーストール牛舎では感染牛の出た牛群が全頭陰性になるまで隔離

・臨床型乳房炎発症牛(特にM.bovis)は淘汰⇒妊娠後期なら即乾乳にして隔離も可、ただし分娩後乳汁検査が必須

・未発症感染牛は可能であれば隔離のもとで治療

・搾乳手順、搾乳順番の変更、搾乳衛生の徹底

 

発生を予防するためにできること

・新規導入牛は導入時検査および結果が出るまでの隔離、分娩時の乳汁検査を実施

・預託牛も新規導入牛に準ずる

・バルク乳の定期的モニタリング

※バルク乳が陰性だから安心せず、バケット搾乳している牛にも注意する。

実際にあった感染パターン

①規模拡大に伴い初妊牛を導入し、その牛が分娩後発症(最も多いパターン)

②育成牛を預託牧場に入れ、その牛たちが分娩後発症

③育成牛を預託牧場に入れ、退牧直後から呼吸器病が拡大、同牛舎内の親牛にも呼吸器病拡大、その治療経過中に乳房炎が多発

④経産牛の乾乳牛を導入、その牛が分娩後に発症

 

いずれのパターンも、乳房炎が治りにくい、急に増えてきた、乳房炎牛の乳量が激減したなど、感染がある程度拡大してから異常に気付き検査をする場合も多いため、淘汰しなければならない牛が多くなったり、隔離や治療に時間がかかります。

導入や退牧後、農場で初めて搾乳する牛は、まず検査。これを心掛けてほしいと思います。質問や不明な点は近くの獣医師に相談してみてください。

 

                              中空知支所 鈴木 奈央

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