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家畜技術情報

代謝プロファイルテスト(MPT)による乳牛の乾乳期管理

はじめに

乳牛は分娩前後の体内において劇的な変化が生じます。特に分娩3週間前から分娩3週後までの移行期には、代謝疾患や感染症のリスクが高まります。この移行期をうまく乗り越えるためにも、乾乳期の栄養管理の重要性が指摘されています。

今回、疾病の多発している3牧場において代謝プロファイルテスト(MPT)を実施し、若干の知見を得ましたのでご紹介します。

 

乾乳期管理と乳熱

乳熱予防を目的とした乾乳期の飼養管理においては、乾乳前期における飼料カルシウム(Ca)の制限給与は行わず、乾乳後期にのみ制限給与を実施することが一般的です。また、乾乳後期にカリウム(K)含量が少ない飼料を使用することで、資料中のイオンバランス(DCAD)を低下させ、結果的に分娩後における血漿中Ca濃度の急激な低下を防ぐ効果が期待できます。

今回MPTを実施したA、B及びCの3牧場で、B牧場とC牧場の平均産次数に大きな差はありませんでしたが(表1)、乳熱の発生率を比較したところ、B牧場において高い発生が確認されました(図1)。

 

B牧場の血液検査において、血中Ca濃度は乾乳前期を除き、大きく逸脱した数値は認められませんでした(図2)。しかし、飼料分析値の結果から、乾乳後期における飼料中K含量が最も多く、乾乳期における高DCAD値が乳熱の高い発生率の要因であると考えられました(図3)。

対策として、乾乳後期牛に給餌する粗飼料のK含量を2%以下に抑え、DCAD値を低下させることが推奨されます。また、飼料中のK含量が高い場合は、K含量の低いコーンサイレージなどを用いた飼料設計や、硫黄(S)、塩素(Cl)などのDCAD値を低下させるイオンを含んだ飼料の利用が必要となります。

 

乾乳期管理と第四胃変位

乾乳期における胎子の発育に伴う子宮の膨大化は、第一胃を腹底から持ち上げるために、第四位は正常な位置より左方へ移動しやすくなります。さらに分娩後に増給される配合飼料に消化能力が対応できなかった場合、ルーメンで発生したVFAやエンドトキシンが四胃運動を抑制し、ガスの貯留が生じるため、第四胃変位(DA)が起こると考えられます。

これらのことから、分娩後の泌乳開始とともに始まる負のエネルギーバランス(NEB)の期間を乗り越え、食いどまりを防ぐことが第4胃変位の発生減少に寄与すると考えらます。特に分娩後は泌乳のためにNEBとなる傾向があり、乾乳期にどれだけしっかり食い込めているかが産後の疾病発生に深く関与します。

 

A牧場で最も多くDAの発生が認められましたが、他の2牧場も全分娩頭数の1割近くが発症し、3牧場共に発生は多い状況にありました(図4)。

その後の調査の結果、3牧場とも分娩後の管理に問題は見つかりませんでしたが、乾乳期の飼養管理に問題が認められました。A牧場では乾乳期の飼料設計でエネルギー、タンパク質が不足する設計となっていました(図5)。

B牧場は設計段階に異常はありませんが、乾乳前期に人手不足に起因する給餌不足が認められました。C牧場は乾乳期用TMRの水分含量が若干高く(写真1)、結果として乾物摂取量が不足していることが確認されました。

まとめ

今回の調査を通して、B牧場での乳熱予防のために乾乳期飼料は現状よりもDCAD値が低くなるよう飼料設計の見直しを行いました。3牧場ともに多く認められたDA対策として、A牧場には乾乳期飼料設計の見直し、B牧場には乾乳前期管理に対する注意喚起、C牧場に対しては不足していた乾物摂取量を補うよう飼料増給の指導を行いました。今後も3牧場の疾病発生状況を検証していきます。

 

(上川中央支所 美瑛家畜診療所 安藤 駿)

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