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出生子牛の受動免疫評価

はじめに

出生子牛の管理において初乳の重要性はこれまで多くの報告があり、半ば常識として捉えられていると思います。反芻獣である牛という動物種はその胎盤の構造から出生後に初乳を摂取することで免疫物質が移行され、生後降りかかるさまざまな病原体と戦う土台を手に入れます。

しかし、免疫移行が上手く行かなかった個体では免疫物質の不足から易感染性状態となってしまい、生後間もなく~1週齢程度から腸炎(下痢症)・呼吸器病・臍帯炎・関節炎などの感染性疾患を発症し、消耗に伴い増体も低下、その後の育成期・繁殖・乳肉生産に至るまで生産性低下のリスクが高くなります。

 

今回、「生後、元気・食欲不振」「下痢」「初乳飲めたのか不明」等の稟告にて診療した子牛(初診時1日齢~10日齢・計11頭)を対象に血液検査を実施し、免疫移行の評価を行いましたのでデータと共に紹介いたします。

 

血液検査項目

①総タンパク質(total protein:TP)

初乳摂取によって増加する子牛血清中免疫グロブリン値とTPは相関があり、TPは推定免疫グロブリン値として利用されます。

②γ-グルタミルトランスペプチターゼ(γ-glutamyl transferase:GGT)

出生時GGT値は低値であるが、初乳給与後は乳中のGGTが免疫グロブリンと共に吸収され、初乳摂取前後で数百倍急激に増加することから、初乳を量的に飲めたのかを推定することができます。

 

評価は以下のようになります。

 

・TP5.5を基準目標値として設定

5.5以上を良、5.4以下を不良(いまいち)とし、更にホルスタイン種4.6以下・黒毛和種5.3以下だとFPT(免疫移行不全)と判断

 

・GGT初乳摂取後の急増を確認

 

結果

TPの目標値を上回った6頭の平均治療回数は7.5回に対して下回った5頭の平均治療回数は14.6回(うち1頭は死亡)と約2倍の差が生まれました。

 

今回の対象は全頭治療牛であり、治療を必要としない健康牛も対象に含むとその差はさらに明確に分かれると考えられます

 

GGTはNo.3のような良好な結果の牛もいればNo.2 No.4 No.5 No.6のようにTPの上昇は見られるが、GGTは低い、といった牛や逆にNo.9のようにGGT上昇は見られたがTPは低い、というように様々な結果が得られました。

 

GGT値は初乳給与後の哺乳管理によって変動がみられる事が報告されています。

親付けや移行乳等の母乳性哺乳では生後5~7日まで高値を維持し、代用乳等の非母乳性哺乳では給与後即座にGGT値が下降することが知られています。

 

TP基準以上GGT低値では生後早期からの代用乳給与管理や生後衰弱や母牛の育児放棄による人工哺乳への切り替えが背景として考えられます。また、GGTの上昇はあるがTPは基準以下というのは母牛が初産牛であったり、そもそもの初乳の質・量不足、給与タイミングの遅延などが背景として考えられました。

 

まとめ

子牛の疾病は原因が1つだけとはいかず様々な原因が絡み合い混在して起きている事が多く、それゆえに対策も一筋縄といかず農家の皆さんの悩みの種となっていると思います。

 

はじめに半ば常識的である、と伝えましたが、子牛の健康管理のそのはじめの第一歩として十分な免疫移行はやはりその後の土台となると思います。

 

今回初乳管理の評価として子牛の血液検査を紹介しましたが、

新生子牛の下痢・肺炎・臍炎・死亡が散見される、育成期の発育が伸び悩む等あれば、今一度その土台の再確認をしてみてはいかがでしょうか。

 

北海道中央農業共済組合 南空知支所 杉本 崇

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