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子牛の肺炎

肺炎は腸炎とならび子牛の病傷および死廃事故の中で大きな割合を占めています。肺炎の中には大きく分けて誤嚥性肺炎と感染性肺炎がありますが、今回は感染性肺炎についてお話します。感染性肺炎の発生には環境・病原体・個体の感染性と複雑な要因が絡んでいます。このため現在は牛呼吸器病症候群(以下BRDC:Bovine Respiratory Disease Complex)と表記されることが多くなっています。

 

BRDCの要因

BRDCは輸送や群編成の変化、過密飼育などの環境ストレスによる感作を受けた個体にウイルスや細菌が侵入し感染が成立することで発生します。特に十分な換気や敷料の交換が行われていないと、アンモニアによる気道粘膜の障害によって感染が起こりやすくなります。また、初乳摂取の不足による易感染性もその要因となります。ウイルスや細菌は単独感染でも肺炎を起こし得ますが、多くの場合は混合感染によって発症し、時に症状が複雑化、重篤化します。

 

治療

BRDCの治療は抗生物質の使用が中心となります。一次選択薬となるペニシリンやカナマイシン、アンピシリンはウイルスやマイコプラズに対して効果はありませんが、パスツレラやマンヘミアといった細菌に対しては有効です。このため発症初期の治療や二次感染の予防においては効果が見込めます。二次選択薬としてはマクロライド系やフルオロキノロン系の薬剤を使用します。特にフルオロキノロン系薬剤は耐性菌がほとんど見られず、マイコプラズマに対しても有効です。発見した時点で重度の呼吸器症状を示している個体に対しては、ステロイド系の抗炎症薬やフルニキシンメグルミンやメロキシカムなどの非ステロイド系抗炎症薬の併用が必要となります。

 

予防

BRDCはひとたび発生すると個体にとどまらず群全体に蔓延し、大きな損害につながります。その予防のために大切なポイントをいくつかにまとめてみます。

  1. ①環境整備
  2. 換気に注意し、こまめな敷料の交換を行うことで、アンモニアの発生を抑えることが重要です。また、一頭当たりの飼養面積を十分に確保することで、子牛へのストレスを軽減することも大切です。
  3. ②個体の免疫力
  4. 基本は十分量の初乳の摂取です。不十分な場合は初乳製剤の使用が必要です。妊娠後期の母牛の栄養状態も大きく影響します。分娩前30~60日前に配合飼料を増給することにより、子牛の自己免疫に大きく関与する胸腺の発達が促されます。また、母牛へのワクチン接種により移行抗体の上昇が期待できます。
③ワクチン接種

BRDCの原因となる細菌やウイルスに対するワクチン接種は発生や蔓延を抑え、発生した場合の症状の軽減にも有効です。現在は鼻腔内投与型のワクチンも発売されており、注射型のワクチンとの併用も行われています。牛5種混合生ワクチンの具体的な接種プログラムとして、母牛からの移行免疫が低下してくる生後1ヶ月頃に一度目の接種を行い、追加免疫として生後4~5ヶ月頃に二度目の接種を行うという方法があります(社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会発行「牛の予防接種について」より抜粋)。

 

(空知中央支所 空知中央家畜診療所 河内克彰)

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