情報

家畜技術情報

子牛の腸炎

はじめに

前々回の技術情報では「寒冷ストレス」について、前回は「子牛の肺炎」について報告しましたが、今回は「子牛の肺炎」と共に大きな問題となっている「子牛の腸炎」を「寒冷ストレス」と絡めた内容で、ある農場における子牛の腸炎多発事例対策について報告します。

 

農場の腸炎発生状況(表1)

 

5~9月に2頭発症しましたが、死亡した個体はいませんでした。12~1月にかけて6頭発症し、4頭が死亡しました。発症日齢は7~41日齢、糞便検査により原因と考えられた病原体は、コクシジウム、ロタ、クリプトスポリジウムです。

 

個体No6の第4診目の臨床症状(写真)と血液検査所見について

 

前日の晩は元気でしたが、次の日(4診目)の朝には虚脱状態となり、体温37.3℃、心拍数120分/分、呼吸数18/分 四肢が間欠的に痙攣、四肢・口腔内冷感、水溶性下痢の臨床症状と、血液検査結果では総淡泊4.9g/dl、アルブミン2.97g/dl、γ-グロブリン0.30g/dl、総コレステロール35mg/dl、Glu4mg/dlであり、著しい低栄養状態と免疫移行不全状態であることが判明しました。

 

哺乳飼養管理状況について

哺乳管理について聞き取りすると、ミルク粉500gを2.5リットルのお湯に溶かしたものを、1日2回給与していました。そこで、実際にミルク粉の計量法を確認したところ、軽量カップを使用して500mlの目盛り位置までミルク粉を入れて軽量していました。このミルク粉を軽量カップで500mlの容積だと250gの重量でした。つまり、実際に給与されたミルク粉量は、この代用乳給与規定量の半量であったことが判明しました。

 

対策について

その日のうちに、デジタルクッキングスケール(電子はかり)を購入していただきました。

 

考察

 

5~9月の環境温度が温かい季節では、ミルク粉量が規定の半量でも体温維持ができていたと考えられます。しかし、12~1月になると環境温度が-20℃に達することもあります。この場合、子牛(特に21日齢以下)にとって体温維持エネルギー消費量は20℃のときに比べて2倍になります(実際はハッチで飼養されることが多く、飼養環境温度が-20℃になることはまれです)。
この牧場で12~1月にかけて腸炎を発症した個体は、①飼養環境温度が低くなり体温維持エネルギー消費量が増えたこと、②規定量の半分のミルク粉量だったため、著しい低栄養状態(低体温)になり、病原体に感染したと考えられます。
この事例では、根本的原因は病原体ではなく、低栄養状態を作りだす飼養環境であると判明しました(図1)。
 

(中空知支所 中空知家畜診療所 村上賢司)

記事一覧へ戻る