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寒冷ストレス

寒冷ストレスとは

牛や馬など恒温動物は、熱的中性圏と呼ばれる好適な温度範囲では余分なエネルギーを使うことなく、単に体からの放熱を調節することによって一定の体温を維持しています。つまり、熱的中性圏は温度ストレスが少なく飼料効率が高い温度条件となります。熱的中性圏を下回る温度(下臨界温度)になると牛は寒冷ストレスを受けます。下臨界温度は成長や管理ステージで異なります。

 

区  分 下臨界温度(℃)
哺乳牛
育成牛
泌乳牛 -24
乾乳牛 -14

寒冷ストレスの影響

冬季は気温の低下に対し体温を維持するため熱産生を増やしています。そのため必要なエネルギー量が増加し、それらに合わせて給餌量を増やす必要があります。下臨界温度が1℃下がるごとに約2%のエネルギー量を増やす必要があるといわれています。

成牛では必要なエネルギーが増量されなければ、熱産生のためにボディコンディションスコア(BCS)が低下します。体重(体脂肪)の減少はより寒冷ストレスを受けやすくなり、さらなるBCSの低下を招くといった負のスパイラルになります。また、分娩前にBCSが低下している親から産まれる子牛は虚弱になりやすく、産褥期疾病の増加や初回発情の遅延なども引き起こされます。

 

子牛は成牛に比べて体重に対する表面積が大きいため熱が放散されやすく、エネルギー供給源の体脂肪も少ないため寒冷ストレスの影響がより大きくなります。特に出生直後の子牛は顕著で、寒冷ストレスは初乳からの免疫吸収を低下させたり遅延させたりします。さらに出生後持続的な寒冷ストレスを与えられた子牛は白血球の割合(好中球増加 リンパ球減少)が変化し、免疫能の発達が遅れるために感染症にかかるリスクが上昇します。

また、寒冷ストレスに適応できるエネルギー量が給与されない結果として、1日あたりの増体量(Daily Gain:DG)の低下が起こります。離乳期や育成期のDGに比例し初産時の乳量が増加するとの報告もあり、乳牛においてもDGの低下は問題となります。

 

 

寒冷ストレスへの対策

①風

風が直接当たらないようにします。風速に比例し寒冷ストレスは増加します。例えば、風速2m/s(風があることを感じる程度)で体感温度は3~4℃低下します。

②牛床

床が乾いていることは寒冷ストレスに対し顕著な抵抗力をあたえます。

③牛体

牛体が濡れたり、汚れていないようにします。体毛に糞などが付いて毛が固まると、空気の層を作ることができず、本来の断熱・保温効果役割を果たせません。

④飼料給与量

気温に対し必要なエネルギーを追加します。

⑤水

凍ったり極めて冷たい水は飲水を制限します。常時飲水可能とすることが採食量の増加と結びつきます。

 

寒冷ストレスは暑熱ストレスに比べ、話題に上がることが少ないように感じます。飼料給与量や牛床の交換頻度が通年同じであるために、子牛の下痢や呼吸器病が冬季に増加したり、春先の繁殖成績が低下する事例も経験しています。各農場に合わせた寒冷ストレス対策により、スムーズに厳寒期を乗り越えられればと思います。

 

(南空知支所南空知家畜診療所 神谷正朗)

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