情報

家畜技術情報

牛伝染性リンパ腫(牛白血病)

はじめに

「牛伝染性リンパ腫」ときいて皆さんピンとくるでしょうか?

「牛白血病」ですと耳に馴染みがある方も多いかと思います。

令和2年7月に、「牛白血病」から「牛伝染性リンパ腫」に名前が変更されました。牛伝染性リンパ腫は、白血球(リンパ球)の異常増殖や腫瘍化が起こる病気で、この病気が牛から人に感染することはありません。

牛伝染性リンパ腫は、次の二つのタイプに分けられます。

 

・地方病型…ウイルス感染による

・散発型……原因不明

 

現場で出会う牛伝染性リンパ腫のうち、ほとんどが上記のウイルス感染による地方病型です。今回はこの地方病型の牛伝染性リンパ腫について紹介します。

 

<原因>

牛伝染性リンパ腫ウイルス(bovine leukemia virus:BLV)の感染が原因です。このウイルスは、血液を介して容易に感染が広がっていきます。具体的には、アブやブユなどの吸血昆虫、輸血や除角などの出血を伴う処置、医療器具の不適切使用(注射筒、注射針や直検手袋などの再使用)、感染牛の乳汁を子牛に哺乳することなどがあげられます。また、感染母牛の子宮内や産道で子牛が感染することもあります。

 

<症状>

感染から発症までに長い潜伏期間があり、数年は症状が認められません。そのうち約30%が持続性リンパ球増多症となり、最終的に2~5%が牛伝染性リンパ腫を発症します。持続性リンパ球増多症となった牛は、免疫機能が低下するため、一見症状がなくても乳房炎など他の病気にかかりやすくなり、経済的損失の原因となります。

発症すると食欲不振、削痩、体表リンパ節の腫脹、乳量低下などが認められます。胸腔内・腹腔内リンパ節が腫脹することで心肺機能に異常が現れたり、水様便が認められることもあります。また、眼窩深部のリンパ節が腫脹すると眼球が押し出され、眼球突出が認められます。発症牛は予後不良で死に至ります。

 

<治療>

適切な治療法は存在しません。

 

<予防>

牛群内での感染拡大を防ぐには、定期的に血液検査を行い、感染牛(=抗体陽性牛)を把握することが重要です。

 

吸血昆虫によるウイルス伝播

・吸血昆虫が感染牛の血を吸い、その後非感染牛を吸血することでウイルス伝播します。このウイルスは乾燥に弱いため、感染牛と非感染牛の距離をとることで、ある程度伝播を防ぐことができます。ただし、持続性リンパ球増多症となった牛は感染を広げるリスクが高くなり、6mの距離をとっても吸血昆虫による伝播が起こったという報告があります。感染牛は他の牛と可能な限り距離をとって隔離し、感染リスクを下げることが重要です。

・吸血昆虫の数を減らす対策が有効です。

 

垂直感染(感染牛乳汁の哺乳、子宮内・産道感染)

・感染牛から子牛をとらない

・感染牛の乳汁を子牛へ給与しない

・乳汁の加温殺菌や凍結処理を徹底する

ことで、母牛から子牛への感染拡大を防ぐことができます。

 

医原性のウイルス伝播

・注射針など血液の付着した医療器具、直検手袋は牛一頭ごとに交換、あるいはきれいに消毒します。

・輸血は、供血牛がウイルス陰性であることを検査で確認してから実施します。

 

農場でのウイルス伝播

・出血を伴う除角、削蹄、断尾、去勢、耳標装着などに使用した器具は牛一頭ごとに交換、あるいはきれいに消毒する事が必要です。

 

<まとめ>

牛伝染性リンパ腫は北海道を含めた全国に蔓延している病気です。すべての農場で完璧に予防策をとることは現実的に難しいですが、可能な対策を実施して清浄化を目指すことが被害を減らすことにつながるのではないかと思います。

 

 

留萌北部家畜診療所 梅月すみれ

記事一覧へ戻る