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家畜技術情報

関係機関と連携した飼養管理指導による乳牛の周産期病低減と繁殖改善事例

はじめに

今回、乳熱をはじめとする周産期病が多発する酪農家において、平成25年11月から1年間NOSAIと農業改良普及センター、飼料会社が連携して飼養管理指導をした結果、周産期病が激減し、繁殖成績が改善した事例を報告します。

 

Ⅰ 酪農家の概要

経産牛80頭、個体乳量10,600㎏、タイストール飼養、とうもろこしサイレージ主体のTMRを給与

問題点:周産期病が多発

 

Ⅱ 飼養管理指導の改善点

1、乾乳牛と泌乳牛の群分け

指導前は泌乳ステージに関係なくバラバラに繋がれていましたが、指導後は泌乳牛、乾乳前期牛、乾乳後期牛と牛舎内で移動させました。明確に乳期毎で群を固めることによって管理しやすいようにしました。(図1)

2、カルシウムコントロール

指導前は乳熱対策のカルシウムコントロールを実施せず、すべての牛に泌乳期用のTMRを給与していました。

指導後は

  • ①泌乳期から乾乳前期(分娩予定60日~21日前)

・カルシウムを添加した泌乳期用のTMRを給与

・飼料からのカルシウム摂取を増やし、分娩にむけて骨にカルシウムを蓄積させるためにカルシウム添加を通常より1.3倍にまで増やしました。

  • ②乾乳後期

・分娩後のカルシウム恒常性機能の活性化、カリウムによるカルシウムの吸収阻害を防ぐためカルシウムとカリウムを給与制限した別メニューのTMRを調整し、良質な乾草とあわせて給与するようにしました。

・分娩予定1週間前にビタミンD3投与の徹底をしました。

 

3、選択採食対策

飼料の選択採食がみられたため、濃厚飼料をペレットからマッシュへ変更、ミキサーの刃を交換してミキシング時間を短縮しました。またタイミングのよいエサのはき寄せを徹底させ、食い込み量の増加も図りました。

 

Ⅲ 結果

1、周産期病(乳熱、ケトーシス、第四胃変位、胎盤停滞、産褥熱)

指導前と比較し、乳熱、ケトーシスは指導後に有意な減少が認められました。他の周産期病も指導前に比べて指導後は減少しました。(表1)

2、繁殖成績(分娩間隔、初回授精日数、授精回数、初産分娩月齢)

指導前と比較して分娩間隔は短縮し、授精回数も減少しました(表2)。

周産期病の減少はストレス軽減や分娩後の乾物摂取量が増加し、エネルギーバランスが正常に保たれた結果、生殖器の回復が早まり繁殖成績が改善したと考えられました。

3、生産者の声

生産者は「腰抜けがなくなった」、「胎盤が早く出た」、「選び食いが減った」、「発情兆候が激しくなった」など良好な反応を示しました。

 

Ⅳ 考察

投資を要する新しい機材や資金の導入をせず「今、出来ることをどこまでするか」を生産者と検討し、お互い納得しながら実践しました。関係機関と連携し多方面からアプローチすることにより、生産者が継続して実践する技術を確立する指導ができました。その結果、起立不能など分娩後の疾病が減少し治療牛の管理が減ったため、精神的、肉体的負担が軽減されました。十分な結果と余裕が得られたため、生産者の意識改革を引き起こし、育成牛の管理や牛舎環境など、さらなる改善意欲を高めることができました。「周産期病は治療から予防へ」軸足を移した飼養管理の見直しが繁殖改善にも有効でした。一度しっかりと飼養管理を見直したことで乳量が安定し、周産期病をはじめとした往診依頼も減少、繁殖成績も良好に推移しています。

今回の技術情報は第50回北海道しゃくなげ会の発表を基に再構成しました。

 

空知中央家畜診療所 尾矢 智志

 

共同研究者

松村 佳伸(雪印種苗株式会社)

田中 義春 (ワイピーテック 技術アドバイザー)

(前 空知農業改良普及センター)

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